日本を出て海外移住や長期滞在する場合、基本的には海外転出届を区市町村に提出して住民票を抜くのが一般的です。
世界一周を計画しているバックパッカーなどもそうですよね。
しかし、住民票を抜かずに海外移住することを検討している人もいらっしゃるでしょう。
ちなみに私はフィリピンでフリーランスをしていますが、住民票は抜いていません。
» セブ島移住 + 海外フリーランスとして働く方法・手順・費用【まとめ】
この記事では海外移住や旅行・長期滞在を予定している方に、住民票を抜くメリットやデメリットを解説していきます。
なお、今回は以下の条件(私と同様の条件)を前提にしています。
- 移住先の国はフィリピン
- 現地で就労したり、中長期滞在者向けのVISAを取得しない
もしこのような条件の方がいらっしゃったら、ぜひ参考になさってくださいね。
目次
海外転出届を提出する=住民票を抜く
海外移住で住民票を抜く場合は、住民登録をしている区市町村に対して海外転出届を提出します。
これが受理されると転出証明書が発行されると同時に、住民票が削除される仕組みです。
なお、再び住民登録するときには、この時発行された「転出証明書」が必要になるため、紛失しないようにご注意くださいね。
つまり、言い換えれば、海外転出届の手続きをしない場合は住民票が日本国内に残ったままとなります。
住民票を抜く場合は海外転出届を提出し、抜かない場合は提出しないと覚えておきましょう。
海外移住で住民票を抜くメリット・デメリット
海外移住で住民票を抜くメリット
海外転出届を提出し、住民票を抜くメリットには以下です。
税金や社会保険料を支払わなくてよくなる
海外移住に伴って住民票を抜いた場合、
- 日本の税金(住民税など)
- 社会保険料(国民健康保険料・国民年金保険料など)
これらを支払う義務がなくなります。
とはいえ、日本国籍を保有している場合、国民年金に関しては任意で加入することもできるので、状況に応じて支払うかどうかを判断してくださいね。
海外移住で住民票を抜くデメリット
日本国外に移住する場合、住民票を抜くメリットはたくさんありますが、それに伴うデメリットもあるのでしっかり確認しておきましょう。
主なデメリットは以下の通りです。
国民健康保険に加入できなくなる
住民票を抜いた場合、日本の国民健康保険に加入することはできなくなります。
国民年金保険とは異なり、任意で加入することもできないのでご注意くださいね。
そのため、一時帰国などで日本国内の医療機関を利用した場合は、医療費を全額支払わなければならず、経済的な負担が大きくなってしまいます。
頻繁に帰国する人なら日本の医療機関を利用する可能性もありますよね。
住民票を抜かなかった場合に支払わなければならない保険料を比較して、海外転出届の提出を判断してくださいね。
日本国内の金融機関の利用時に困る
日本国内に住所がない場合、銀行や証券会社・クレジットカードなどを新たに契約することが難しくなります。
すでに契約している場合は、国外へ転出する場合でも継続して利用できるところがほとんどです。
しかし、新規契約となるとハードルが上がるので、海外転出届を提出する予定の方は、提出前に銀行口座開設やクレジットカードの発行を済ませておきましょう。
特に海外では緊急時に「海外送金」が必要になることがよくあります。
現地で日本円を現金化する手段を準備しておく・緊急事態に備えて日本の家族に送金してもらえる体制を整えておくなど、お金まわりの準備はぜひ万全にしておきましょう。
住民税が課税される
住民税は毎年1月1日時点で、住民登録をしている区市町村が前年の所得に対して課する地方税です。
そのため、前年に所得がある状態で住民票を抜かずに海外移住すると、住民税を支払わなければならなくなるのでご注意くださいね。
住民税は基本的に毎年5月頃に納税通知書が送付され、一括もしくは4期分割で納付する必要があります。
移住先で就労しない場合は「住民票を抜かない」のもあり
ここまで、海外移住で住民票を抜くメリットとデメリットを確認しました。
こうしてまとめてみると、
- 移住先で就労しない
- 長期滞在者向けのVISAを取得しない
この条件下では「住民票を抜かない」という選択肢も考えられますよね。
住民票を抜かずに海外で長期滞在をするメリットは次の通りです。
国民健康保険に加入できる
住民票を抜かない場合、国民健康保険に加入することになります。
したがって、日本に一時帰国して医療機関を受診するとき、保険を使えるのは大きなメリットであるといえるでしょう。
また、国民健康保険に加入しておけば海外の医療機関を受診した場合でも、「海外療養費制度」を利用すると医療費の一部が戻ってくるのでぜひ覚えておきましょう。
なお、還付される医療費は「日本国内で同等の医療を受けた場合にかかる費用の70%」です。
ちなみにフィリピンの場合、医療費はアメリカなど医療費が高い国に比べるとそこまで高額ではありません。
ただし、日本人とみられると、必要のない入院を勧められたり、個室スイートなどの料金の高い部屋を勧められることもありますので注意が必要です。
この海外療養費制度を利用できるケースは、日本国内で保険診療の対象になっている医療を受けた場合に限られますが、覚えておいて損のない制度といえるでしょう。
失業給付金を受けられる
これまで被雇用者として働いていて、会社を辞めて海外移住する場合は住民票を抜かない方がおすすめです。
住民票を抜いてしまうと失業給付金を受けられなくなってしまいますので、失業給付金の受給資格を満たしている場合は、住民票を残しておき受給するのがおすすめです。
住民票を抜かないほうがいい人・抜いた方がいい人
総合的に考えると、以下の条件に該当する人は住民票を抜かずに渡航するのがおすすめです。
住民票を抜かない方がいい人
頻繁に一時帰国する人
頻繁に一時帰国し、その際に医療機関を受診する可能性がある人は住民票を残しておき、国民健康保険に加入しておくのがおすすめです。
私も年に数回は必ず日本へ帰国するため住民票を抜いておらず、念のため海外旅行保険はクレジットカード付帯の保険も適用できるようにしています。
住民税を負担しても問題がない人
住民票を抜かない場合、住民税を支払う必要があります。
ですが、住民票を抜かないことによって支払う住民税以上のリターンを受けられると判断できるのであれば、住民票を残しておいてもいいですよね。
前述の一時帰国以外にも、私のように日本を拠点に経済活動をしているなど、住民票があった方が利便性が高い場合なども、住民票を抜かない方がいいケースもあります。
住民票を抜いた方がいい人
住民票を抜いたほうがいいと考えられるのは、以下に該当する人です。
永住目的で渡航する人
ツーリストビザを延長しながら滞在し、中長期滞在者向けのVISAを取得しない場合でも、いずれ何らかの方法で永住ビザや就労ビザなどを取得したいと思っているのであれば、住民票を抜いておくのがおすすめです。
同様にほとんど一時帰国をしない方も、住民票を残しておくメリットはほぼないといえるでしょう。
この場合、海外転出届を提出しておくことをおすすめします。
住民税や社会保険料を支払いたくない人
住民税や国民健康保険料などを支払いたくない人は住民票を抜きましょう。
この場合、いざという時の医療費負担に備えて個別に民間保険に加入しておくのがおすすめです。
民間保険に加入する場合は、必要な保障がしっかり備わっているものを選んでくださいね。
渡航目的に応じて海外転出届を考えよう
今回はフィリピンに海外移住している私の例をあげながら、海外移住するときの住民票を抜くメリットとデメリットを紹介しました。
ここであげたポイントを簡単にまとめると次の通りです。
- いずれ何らかのVISAを取得して長期滞在することが前提 + 一時帰国ほぼなしの場合は「住民票を抜く」
- ツーリストビザが延長できる範囲内での滞在 + 頻繁に一時帰国する場合は「住民票を抜かない」
- 現地で就労しない場合、住民票を抜かなくても大きなデメリットはない
基本的には、海外移住する目的や期間・一時帰国の頻度に応じて、海外転出届の提出を検討してくださいね。
海外移住を検討したとき「住民票は抜かなければいけない」と考えがちですが、残しておくメリットもあります。
しっかりメリット・デメリットを比較した上で判断しましょう。